表紙の作品 「ポプラ」1924(大正13)年 油彩・カンヴァス 52.9×40.8cm 木田ファンにはおなじみの、初期の代表作。大正末期の木田の画風を今に伝える貴重で重要な作品は、木田の生涯にわたる親友・佐藤彌十郎(岩内町名誉町民・岩内町郷土館初代館長)が所蔵していた。 この作品が描かれたのは、現在の岩内神社の参道沿い、含翠園の向かいにあたる場所である。ニシン漁全盛期には、ニシン干場だった土地であり、近年まで岩内神社例大祭の際にはサーカス小屋が立っていた場所である。ここを流れる運上屋川の両岸にあったポプラ並木を描いたものだと言われている。 木の葉一枚一枚を色彩豊かに丹念に描く姿勢は、当時木田が吸収していた印象主義そのものであろう。現在の私たちは、この作品を「印象派的」と見ることができるが、当時、この作品は町民にどのように見られていたのだろうか。今から80年以上前に、地方の町で描かれたことを鑑みると、木田が摂取していた印象主義、それをもたらした白樺派同人、有島武郎との出会いの意味は、やはり大きいと言えよう。 ポプラの樹齢は百年に満たず、戦後並木は伐採されてしまい現存しないが、岩内にこの風景があったことは、このタッチと色彩の中に永遠に記録されている。 この作品は現時点で最も新しい「寄贈作品」である。所蔵者の彌十郎四女・佐藤壽子さん(2006年春『群暉』43号「めぐりあい」にご登場いただいた)が開館当初から当館に寄託していただいていた作品だが、昨年10月11日に当館へ寄贈されたものである。 親子二代にわたる木田との深い縁。ポプラの木々は色彩鮮やかにカンヴァスに生き続けている。リニューアル開館後、再びこの作品と出会うことも、リニューアル開館のたのしみと感じていただければ幸いである。 (学芸員 岡部 卓)